会社が赤字になるとどうなる?ケース別に起きること・対策を解説

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会社が赤字になるとどうなる?ケース別に起きること・対策を解説

会社が赤字になるとどうなる?ケース別に起きること・対策を解説

2024/07/08

赤字経営が続くと、企業はさまざまなリスクに直面しますが、適切な対応策を講じることで、経営の立て直しが可能です。すぐに倒産するわけではなく、まずは冷静になり対策を講じる必要があります。本記事では、会社が赤字になるとどのような影響が生じるのか、どのような対策を取るべきかについて、ケースごとに詳しく解説します。

赤字の基礎知識

まずは、赤字とはどのような状況なのか、詳しく見ていきましょう。

営業損失とは

営業損失は、企業の本業における収益状況を示す指標です。損益計算書において、売上総利益(粗利益)から販売費および一般管理費(販管費)を差し引いた金額がマイナスとなった場合を指します。

営業損失が発生する原因は多岐にわたり、企業の営業活動や経費管理に問題があることが多くみられます。

たとえば、小売企業が年間売上総利益として1,000万円を上げているとします。しかし、広告費、販売促進費、給与手当、福利厚生費などの販管費が1,200万円かかった場合、この企業は200万円の営業損失を計上することになります。これは、本業で得た利益以上に運営コストがかかっているためです。

経常損失とは

経常損失は、企業の本業および本業以外の通常の事業活動から発生する損益のことです。営業利益(または営業損失)に営業外収益を加え、そこから営業外費用を差し引いた金額がマイナスとなった状態を指します。

下記を例に挙げて、詳しく解説します。

売上総利益:5,000万円

販売費および一般管理費:2,500万円

営業外収益(受取利息、配当金など):30万円

営業外費用(支払利息、雑損失など):20万円

 

営業利益=売上総利益−販売費および一般管理費=5,000万円−2,500万円=2,500万円

よって営業利益は2,500万円となります。

次に、経常損失を以下のように計算します。

経常損失=営業利益+営業外収益−営業外費用=2,500万円+30万円−20万円=2,510万円

この例では経常損失は発生していませんが、仮に営業外費用が2,560万円であった場合、経常損失は以下のようになります。

経常損失=2,500万円+30万円−2,560万円=−30万円

このように、営業利益がプラスであっても、営業外費用が大きければ経常損失が発生することになります。

当期純損失とは

当期純損失は、企業がある会計年度において最終的に計上した損失のことです。すべての収益からすべての費用を差し引いた結果がマイナスとなった場合に発生します。具体的には、税引前当期純利益(または損失)から法人税等を差し引いた金額がマイナスとなる場合を指します。

下記を例に詳しく見ていきましょう。

総収益:1億円

総費用:1億2000万円

法人税等:500万円

この場合、税引前当期純損失は以下のように計算します。

税引前当期純損失=1億円−1億2000万円=−2000万円

さらに法人税等を差し引いた場合は下記のとおりです。

当期純損失=−2000万円−500万円=−2500万円

この企業は当期純損失として2500万円を計上することになります。

赤字の発生原因

赤字から脱却するためには、発生原因を突き止める必要があります。赤字の発生原因について詳しく見ていきましょう。

創業時の赤字

創業時の赤字は、起業したばかりの企業において発生しがちな現象です。まだ事業が軌道に乗っておらず、売上が十分に上がらない一方で、事業を運営するための初期費用がかかるため、赤字に陥る企業が散見されます。

具体的には、設備投資、人件費、広告宣伝費などが大きな支出となります。

たとえば、レストランを開業した場合、開業に際して店舗の改装、調理器具や家具の購入、スタッフの採用といった初期投資が必要です。しかし、開業直後はまだ顧客が定着しておらず、売上が不安定なため、収益がコストを上回ることは難しいでしょう。こうした状況により、創業時に赤字になってしまいます。

恒常的な赤字

恒常的な赤字は、企業が継続的に赤字を計上し、改善の見込みがない状態のことです。企業の経営に深刻な影響を及ぼし、金融機関からの信用を失い、新規融資が困難になるリスクがあります​。

業界全体が縮小している業界全体が縮小傾向にある場合、企業の売上も低迷しやすくなります。たとえば、アナログ製品を製造している企業がデジタル化の進展により市場から淘汰されるケースが挙げられます。また、強力な競合他社が現れると、価格競争が激化し、利益率が低下します。この結果、収益が減少し、恒常的な赤字に陥ることがあります。

さらに、不採算部門が存在し、それを整理できない場合、企業全体の収益性が低下し、赤字が続くことがあります。たとえば、ある製造業の企業が市場での競争力を失い、売上が減少した場合を考えてみましょう。

新しい製品ラインの開発に投資することで改善の糸口を見いだせる可能性がありますが、市場に受け入れられず売上が回復しなければ、毎期赤字を計上し、経営の改善が見込めない状況に陥ります。

一時的な赤字

一時的な赤字は、特定の一時的な要因によって発生し、企業の経営において避けられないものと言えます。恒常的な赤字とは異なり、適切な対応を講じることで次期以降に黒字に転換できる可能性が高いでしょう。

発生原因として、地震や台風などの自然災害による修復費用、大規模なリストラや工場閉鎖による費用が特別損失として計上される場合や、事業拡大や新規事業の開始に伴う大規模な設備投資などが挙げられます。さらに、為替相場や株式市場の急激な変動による一時的な損失も原因となることがあります。

たとえば、新しい製品ラインの立ち上げに伴い1億円の設備投資を行った製造企業が当期赤字決算となるものの、次年度以降に売上が増加し黒字に転換するケースがあります。また、自然災害で工場が被害を受け、その修復費用が特別損失として計上される場合も典型的な例です。

赤字決算の影響

赤字決算が続くと、企業の経営に大きな支障をきたすおそれがあります。赤字決算の影響について詳しく見ていきましょう。

資金繰りの問題

赤字決算の影響は企業のキャッシュフローに直接的な影響を及ぼします。売上が減少し、支出が収入を上回ると、手元資金が不足し、資金繰りが厳しくなります。たとえば、売上が期待に届かず、月末の支払いが増えると、銀行からの借入れを増やす必要が生じるかもしれません。しかし、このような借入れが続くと、金利負担が増加し、さらなる財務悪化を招くリスクがあります。

さらに、売掛金の未回収が続くと資金繰りの問題が深刻化します。たとえば、大口取引先が支払いを遅延した場合、他の支払い義務を果たすための資金が不足し、結果として短期的な資金繰りの問題が発生します。このような状況が長引くと、企業は手元資金を確保するために資産の売却や追加の借入れを行わざるを得なくなり、これが倒産リスクを高める可能性があります。

銀行融資の影響

赤字決算が続くと、企業は金融機関からの信用が低下し、新規融資や追加融資を受けることが難しくなります。銀行は融資審査において企業の収益性を重視するため、赤字決算が続く企業に対しては厳しい条件を課すことが一般的です。

たとえば、中小企業が2年連続で赤字決算を発表した場合、新たに事業拡大のための融資を申請しても、銀行はその企業の返済能力に疑問を抱く可能性が高いでしょう。融資の条件が厳しくなり、高金利の設定や、さらには追加の担保要求がなされることがあります。

仕入先との関係悪化

赤字が続くと、企業は仕入先からの信用も低下し、取引条件が厳しくなることがあります。たとえば、小売業者が3年間連続で赤字を計上している場合、主要な仕入先は代金回収のリスクを懸念し、取引条件の見直しを迫られることがあります。この見直しの種類には、商品代金の前払い要求や、従来よりも短い支払い期限の設定、さらには信用供与の限度額引き下げなどがあります。

事業活動の縮小

資金繰りが悪化すると、企業は事業活動の縮小を余儀なくされることがあります。たとえば、資金不足により設備投資を延期することが一般的です。これにより、企業は最新技術の導入や生産設備の更新を遅らせることになり、生産効率や製品品質の向上が見込めなくなります。結果として、市場での競争力が低下し、長期的な成長機会を逃すリスクが高まります。

従業員の士気低下

赤字決算は従業員の士気にも大きな悪影響を及ぼします。経営の不安定さから、従業員は自分の将来に対する不安を感じ、仕事へのモチベーションが低下します。たとえば、ある企業が連続して赤字を計上した場合、従業員はリストラや給与カットの可能性を心配し、安心して働くことが難しくなります。この不安が高まると、従業員は自分の仕事に集中できなくなり、生産性が低下します​。

さらに、経営陣がコスト削減のために人員削減や福利厚生のカットを実施すると、従業員の士気はさらに低下します。たとえば、年次ボーナスの削減や昇給の凍結が行われると、従業員は自分の努力が報われないと感じ、企業への帰属意識が失われてしまいかねません。

競争力の低下

継続的な赤字は企業の競争力を大きく低下させる原因となります。資金不足により、研究開発やマーケティングに十分な投資ができなくなります。たとえば、製品の改良や新商品の開発に必要な資金が確保できない場合、競合他社が先行する技術やサービスを提供する中で、自社は市場での競争力を失うことになるでしょう。

赤字決算のメリット

赤字決算には一見ネガティブなイメージが強いですが、いくつかのメリットも存在します。以下に、具体的な例とともに詳しく解説します。

税金負担が軽減される

赤字決算の最大のメリットの1つは、税金負担が軽減されることです。通常、企業は利益に対して法人税を支払う義務がありますが、赤字の場合は利益が出ていないため、法人税の支払いが発生しません。

たとえば、年間で1,000万円の黒字が続いていたとしても、赤字を計上した場合、その年の法人税はゼロになります。これにより、企業はコストを抑えて他の重要な経費に充てることができます​。

法人税が還付される場合がある

赤字決算により、法人税の還付を受けられる場合があります。これは「欠損金の繰戻し還付」と呼ばれる制度で、前期に黒字で法人税を納付した企業が、翌期に赤字を計上した際に利用できるものです。ただし、青色申告書を前期および当期に提出しており、なおかつ当期について期限内に提出している必要があります。

欠損金の繰越し・繰戻しが可能

赤字決算で生じた欠損金は、翌年以降の黒字と相殺できます。具体的には、赤字を翌年度から最大10年間にわたって繰り越すことで、将来の法人税負担を軽減することが可能です。たとえば、今年度に300万円の赤字が出た場合、翌年度に500万円の黒字が発生しても、その300万円を差し引いて200万円に対してのみ法人税が課されます。これにより、企業は税負担を大幅に軽減できます。

赤字から脱却するための対策

赤字から脱却するためには、原因に応じた対策を講じる必要があります。具体的に見ていきましょう。

コスト削減

赤字から脱却するためのコスト削減策には、いくつかの方法があります。たとえば、データと分析を活用することで、業務の効率化を図ることができます。企業は高度な分析ツールを使用して運用コストを最適化し、不必要な支出を削減することが可能です。

また、調達プロセスの見直しも有効です。たとえば、複数のサプライヤーから見積もりを取り、最もコスト効果の高い選択をすることで、資材費を削減できます。さらに、技術の導入も重要です。たとえば、精密農業技術を導入することで、資源の無駄を減らし、運用コストを削減できます。

加えて、予算削減だけに頼らず、節約した資金を再投資することで、さらなる効率化やサービス向上を図ることができます。短期的なコスト削減だけでなく、長期的な財務健全化も実現できるでしょう。

これらの戦略を組み合わせることで、赤字からの脱却がより現実的になります。

売上拡大の戦略

赤字から脱却するための売上拡大の戦略には、いくつかの方法があります。たとえば、新規市場の開拓を通じて売上を増やすことが考えられます。既存製品を新しい地域や顧客層に提供することで、知名度の向上にもつながるでしょう。また、顧客に対するアップセルやクロスセル戦略も有効です。たとえば、既存顧客に対して高付加価値商品やサービスを提案することで、一顧客あたりの売上を増加させることができます。

さらに、デジタルマーケティングを活用することも重要です。ソーシャルメディアや検索エンジン最適化(SEO)を通じてオンラインでの認知度を高めることで、新規顧客の獲得を促進できます。また、パートナーシップやコラボレーションを通じて新しいビジネスチャンスを創出することも有効です。関連業界の企業と提携することで、互いの顧客基盤を活用して相互に売上を拡大できます。

外部の専門家の活用

赤字から脱却するためには、外部の専門家を活用することも効果的です。たとえば、経営コンサルタントを雇うことで、企業の運営効率を改善し、コスト削減や売上拡大のための具体的な戦略を立案できます。外部の専門家は、最新の市場動向やベストプラクティスに基づいたアドバイスを提供するため、企業内部では気づかない問題点や改善点を指摘することが可能です。

また、ITコンサルタントを雇うことで、業務プロセスのデジタル化やシステムの最適化を図り、効率性を高めることができます。外部の専門家を適切に活用することで、組織全体のパフォーマンスを向上させ、赤字からの脱却を実現することが可能です​。

M&Aの実施

赤字から脱却するために、M&A(企業の合併・買収)を実施することも効果的です。たとえば、競合他社を買収することで市場シェアを拡大し、売上を増加させることができます。また、シナジー効果を活用してコスト削減を図ることも可能です。たとえば、卸売業者が物流業者とM&Aを実施することで、物流コストを抑えることができます。

さらに、新しい技術や製品ラインを持つ企業を買収することで、製品ポートフォリオを強化し、競争力を高めることが可能です。M&Aは、迅速な市場参入を実現する手段としても有効です。

赤字が続く場合はM&Aを前向きに検討しよう

赤字が続く場合、企業はM&A(企業の合併・買収)を前向きに検討することが重要です。M&Aにより、新しい市場に参入したり技術を取得したりできるだけでなく、資金不足を補い、経営の安定化を図ることができます。

株式会社エムアイエスは、中小企業庁によるM&A支援機関に認定されており、精度の高いアドバイスの提供が可能です。

自社でもM&A経験があり、経験に基づいたアドバイスでM&Aを成功に導きます。まずはお気軽にご相談ください。

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