会社を廃業すると従業員の失業保険は?知っておくべき手続きのポイント
会社を廃業すると従業員は解雇となり仕事を失います。そのときに従業員が安心して再就職できるように支援する制度が失業保険です。
失業保険の受給手続きは本人が行いますが、会社としても従業員と家族のその後の生活をサポートするために、できる限り条件や手続き方法について知っておいた方がよいでしょう。
この記事では、廃業時の従業員の失業保険について解説します。
この記事を書いた人
松村昌典
株式会社エムアイエス 代表
山口県山口市(旧:阿知須町)生まれ 立命館大学経済学部卒業
大学卒業後、山口県中小企業団体中央会に入職。ものづくり補助金事務局を9年間担当。
2022年5月に独立し、株式会社Management Intelligence Service(現:株式会社エムアイエス)を立ち上げる。経営コンサルタントとして支援した企業はのべ1,000社以上。ITやマーケティングに関する知見の深さと、柔軟な発想力による補助金獲得支援に定評がある。自らのM&A経験を活かした企業へのM&A支援も得意とする。
「山口県から日本を元気にする経営コンサルタント」を合言葉に、山口県内の企業はもちろんのこと、県外企業へのコンサルティングも積極的におこなっている。
〈保有資格・認定〉
中小企業診断士
応用情報技術者
〈所属・会員情報〉
山口県中小企業診断士協会 正会員
山口県中小企業組合士会 正会員
山口県中小企業家同友会 正会員
目次
会社を廃業すると従業員の失業保険はどうなる?
会社を廃業したとき、従業員の失業保険はどのような取り扱いになるのでしょうか。
ここでは、会社が廃業した場合の退職に関する基礎知識を紹介するので、まずは基本をしっかりと整理しておきましょう。
失業保険の特定受給資格者とは
特定受給資格者とは、会社の倒産・廃業・解雇など、雇用先の都合によって再就職の準備ができないまま離職することになった人のことです。
似た名称に特定理由離職者があり、こちらは自己都合退職や有期労働契約が更新されなかった人を指します。
特定受給資格者として認定されると、通常の退職者よりも有利な条件で失業手当を受けられる点が大きな違いです。
通常、失業手当の受給資格を得るには被保険者期間が12か月以上必要ですが、特定受給資格者は6か月で受給資格を得られます。
さらに受給開始まで2か月待つ必要はなく、7日間の待機期間ののちにすぐに受け取れ、給付日数も自己都合退職に比べて最大180日間多くなります。
会社の廃業で経営者が行うべき手続き
会社を廃業すると、業務や営業は行われなくなり、社員は解雇(会社都合による退職)を余儀なくされ、生活に大きな影響が出ます。
ここでは労働者に対して経営者がしなければならない手続きを紹介するので、事前に把握しておき、漏れのないように実施しましょう。
従業員が知っておくべき失業保険受給の流れ
ここでは従業員が解雇後にもらう失業保険の受給の流れを紹介します。
従業員がきちんと失業保険を受け取れるよう、会社側で適切にサポートすることも重要なので、流れを知っておきましょう。
- 雇用保険被保険者離職票
- マイナンバーカード
- 写真(縦3cm×横2.4cm)×2枚
- 預金通帳またはキャッシュカード
- 会社の廃業を証明する書類
- 給与明細書(過去6か月分以上)
- 勤務を証明する書類(タイムカードなど)
- 印鑑
源泉徴収票は失業保険の手続きでは届出は必要ありませんが、確定申告や新しい就職先での年末調整、扶養に入る場合は配偶者の年末調整に必要なので保管しておきましょう。
受給までの手続きは以下の流れで行います。
- 求職申込と受給資格の決定
- 雇用保険説明会への参加
- 待機期間(7日間)
- 1回目の失業認定
- 1回目の基本手当受給
失業保険受給中の注意点
失業保険の受給中はいくつか注意が必要です。まず、給付期間中は4週間に1回、指定された認定日にハローワークで失業認定を受けなければなりません。このとき、4週間に2回以上の求職活動実績が必要です。
通算7日間の待機期間はアルバイトを含む一切の労働が禁止されています。この期間に働いてしまうと待機期間の延長措置が取られたり、失業保険の受給資格を失ったりするおそれがあるため注意しましょう。
待機期間を終えた失業保険の受給期間中のアルバイトは可能ですが、週の労働時間は20時間未満にしなければなりません。
また、1日のアルバイトの賃金は失業保険の日額の80%以下である必要があり、31日を超えてアルバイト契約をしてはいけません。収入を得た場合は認定日に必ずハローワークに申告しましょう。
会社廃業時のトラブル防止策と注意点
会社の廃業ではさまざまな事務処理が必要です。そのため、できるだけトラブルを避けてスムーズに処理を進めていきたいものです。
ここでは廃業時にとくに起こりやすいトラブルとその防止策、注意点について解説します。
事前の計画と従業員への告知タイミング
会社を突然廃業してしまうと、取引先や従業員など多くの人に迷惑をかけてしまいます。そのため、正式に廃業する前に関係者に説明し、準備を進めることが大切です。
廃業の準備を進めるうえで想定していない時期に情報が洩れてしまうと大混乱に陥るおそれがあります。いつ、誰に廃業の予定を伝えるかは状況を見ながら慎重に考えましょう。
廃業により従業員を解雇する場合は、解雇日の30日前までに従業員に通知しなければなりません。
ただしあまりにも早く伝えすぎると従業員の混乱につながる原因となります。事実でない情報が噂が広まったり廃業の支障となったりする可能性があるためタイミングはしっかり見極めましょう。
再就職支援やキャリアサポート
会社が廃業すると従業員は職を失い、収入が途絶えるため、会社として従業員の再就職を支援する必要があります。
支援の方法はさまざまありますが、同業者や取引先に相談して雇用を依頼する方法などが一般的です。
自分で再就職先を模索する従業員には面接や就職活動、資格取得などのために有給休暇を使えるようにしましょう。
そのほか、従業員が疑問や心の負担を解消できたり、気軽に質問できたりする電話相談窓口を職場に設置すると安心です。法律上の相談にも乗れるよう、弁護士に窓口を依頼するのもよいでしょう。
また、1か月間に30人以上の従業員が離職する場合にはハローワークに再就職援助計画や大量雇用変動届の提出が必要です。
書類不備や手続き遅延によるトラブル
会社の廃業時に行うべき書類作成や手続きに不備があると、トラブルの原因となるため、注意が必要です。
会社を清算するにはまず、株主総会で会社の解散を決議します。このときに清算人の選任と定款の変更も決議しなければなりません。
会社が解散したら2週間以内に解散の登記を行い、清算人は清算開始時の財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会で承認を得ます。
法人の解散と清算を終えたら行うのが、正式に法人を消滅させるための清算結了登記です。
会社の廃業では膨大な事務作業が発生します。取引先や従業員が関わるものもあるため、漏れや遅れがないように徹底して手続きを行うことが大切です。
会社の廃業を回避する選択肢とは
会社は新たな経営者に運営を引き継ぐなど、必ずしも廃業を選択しなくてもよいケースがあります。
ここでは事業を継続する手段やその手順について紹介するので、事業やサービスを次世代に引き継ぎたい場合はチェックしておきましょう。
- 仲介会社への初期相談
- 仲介契約
- 売り手企業と買い手企業の面談
- 基本合意(仮契約)
- 買収監査
- 最終契約
最終契約を締結したら、社内外へM&Aの情報開示を行います。開示時期については売り手と買い手で話し合い、トラブルのないように進めましょう。
まとめ
会社を廃業すると、従業員は解雇を余儀なくされ、給料や賞与、残業代が支払われなく不安な状況になります。
対象の従業員には、スムーズに失業保険の受給申請や再就職に向けた活動ができるよう、会社としてもサポートすることが大切です。
解雇された従業員の失業保険の条件は自己都合の退職と異なります。手続きは本人が行う必要があるとはいえ、会社側からも支援できるよう、条件や手続き方法には目を通しておいた方がよいでしょう。
