会社の解散と廃業の違いとは?事業終了の選択肢を詳しく解説!
2024/08/09
会社が事業を終了することを指す言葉に解散や廃業などがありますが、厳密にはこの2つの言葉の意味が異なることをご存知でしょうか。組織に着目したか、事業に着目したかで異なります。
経営者が事業をやめる決断をしても、実際に終了するまでにはさまざまな手続きを踏まなければなりません。会社の置かれた状況によって取るべき方法は異なり、手続きの段階に応じても違う言葉で表現されるのが通常です。
この記事では、会社の解散や廃業をはじめとした事業終了を表す言葉の意味の違いを説明するとともに、事業を終了する際の手続きや取るべき選択肢を詳しく解説します。
この記事を書いた人
松村昌典
株式会社エムアイエス 代表
山口県山口市(旧:阿知須町)生まれ 立命館大学経済学部卒業
大学卒業後、山口県中小企業団体中央会に入職。ものづくり補助金事務局を9年間担当。
2022年5月に独立し、株式会社Management Intelligence Service(現:株式会社エムアイエス)を立ち上げる。経営コンサルタントとして支援した企業はのべ1,000社以上。ITやマーケティングに関する知見の深さと、柔軟な発想力による補助金獲得支援に定評がある。自らのM&A経験を活かした企業へのM&A支援も得意とする。
「山口県から日本を元気にする経営コンサルタント」を合言葉に、山口県内の企業はもちろんのこと、県外企業へのコンサルティングも積極的におこなっている。
〈保有資格・認定〉
中小企業診断士
応用情報技術者
〈所属・会員情報〉
山口県中小企業診断士協会 正会員
山口県中小企業組合士会 正会員
山口県中小企業家同友会 正会員
目次
会社の解散と廃業の主な違い
会社の解散と廃業の主な違いは、解散は会社という「組織の消滅」の段階を示す言葉の1つで、廃業は「事業活動の終了」に焦点を当てた言葉という点です。
ただし「会社の解散」には法律上の定義があり、「会社を消滅させるために必要な最初の手続き」とされています。
事業終了にまつわる会社の状況
事業を停止した会社は、「倒産」「休業」などさまざまな言葉で表現されますが、これは会社の状況に応じて使い分けられています。代表的なものを見ていきましょう。
休業
休業とは、一時的な事業の停止を指します。廃業が永続的な事業の終了であるのに対して、休業は「再開の意思がある」のが相違点です。
ただし実際には、再開の見通しが立たずに長期間にわたって事業活動を停止していても、法人登記を残したままの状態であれば休業と呼ばれます。
実態は廃業に等しい休業も少なくありません。このため、12年間いずれの登記申請もされていない場合、休眠会社として整理する仕組みがあります。
株式会社の役員の任期は非公開会社であっても10年が最長のため、本来それ以上の期間に何の登記もされないことはあり得ません。登記申請がなければ、実体として会社が機能していないと捉えられるでしょう。
整理の対象となった場合、公告にしたがって2カ月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出をしないと解散したものと見なされます。
会社を廃業・解散する場合の問題点
会社を解散して事業を永続的に停止する場合、さまざまな問題が発生する可能性があるでしょう。会社を廃業・解散する際に生じる問題や、注意すべきポイントを解説します。
債務の解消はできない
法人を解散したからといって、その会社が抱える債務が解消されるわけではありません。会社が持つ資産を換金して債務の弁済に充てる必要があります。
資産が負債を上回っている状態で、すべての債務を解消できるのであれば、特に問題は生じません。債務を弁済してなお残余資産があれば、株主に配当を行ってすべての財産を処分します。これが通常清算という手続きです。
しかし会社の負債が資産を上回っている、つまり債務超過の状態や、その疑いがある場合には、特別清算や破産などの手続きによって、債務を清算しなければなりません。
解散する会社が株式会社で、なおかつ債権者の合意を得ているなどの要件を満たす場合には特別清算が選択できますが、それ以外のケースや協定が否決された場合などには破産手続きを行います。
廃業・解散するときの手続きとステップ
「事業を終了する」という意思決定をしても、即座に会社が消滅するわけではありません。
廃業や会社の解散には、さまざまな手続きが法律で定められています。廃業・解散するときの手続きを段階を追って見ていきましょう。
廃業・解散にかかる費用
廃業や会社の解散には法律で定められた手続きが必要とされ、それには一定の費用が掛かります。廃業・解散にかかる代表的な費用を見ていきましょう。
主な費用 | 金額 |
登録免許税(解散登記) | 30,000円 |
登録免許税(清算人選任登記) | 9,000円 |
登録免許税(清算結了登記) | 2,000円 |
司法書士報酬 | 10万円~ |
官報公告 | 3万 ~ 5万円 |
税理士報酬(確定申告) | 10万円~ |
賃貸借物件の原状回復
事務所や店舗などを賃貸借していた場合には、物件を退去する際に「借りてから生じた損傷を回復する義務」が生じます。これが原状回復義務で、借りた側が負わなければなりません。
同じ賃貸借でも住宅などは通常の損耗や経年劣化を回復する義務はなく、ハウスクリーニングや壁紙の張り替えなどで対応可能なケースが多いですが、事業用の物件は事情が少し異なります。
例えば什器などの設置がない物件であれば、退去する際に内装をすべて解体し「スケルトン」状態に戻す必要があります。
原状回復に要する費用は物件の種別や状態、契約内容によって大きく異なり、1坪当たり数万円で済むケースもあれば10万円を超すケースもあるでしょう。面積が大きくなればそれだけ費用も高額になるため、少なからぬ費用が発生します。
廃業を回避できる「M&A(事業承継)」
廃業する理由が「後継者の不在」であるのなら、M&Aによる事業承継という選択肢も検討すべきでしょう。
親族や社内で後継者が見つからなくとも、第三者である企業や個人へ会社を売却すれば、経営者の引退に伴う廃業を回避できます。
まとめ
会社という法人格も、始まりがあり終わりがあります。しかし必ず終わりがくるわけではなく、健全な経営を続けていれば、所有者や経営者が替わっても存続が可能です。
言い換えれば、経営者の引退に際して後継者がいなければ、やむを得ず廃業という選択を迫られる要因となってしまいます。
会社の解散や廃業に関する正しい知識を持ったうえで、会社や事業を継続させていくための方策を検討しておきましょう。