有限会社の事業承継|メリットは?成功させるポイントと注意点を解説!

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有限会社の事業承継|メリットは?成功させるポイントと注意点を解説!

有限会社の事業承継|メリットは?成功させるポイントと注意点を解説!

2024/09/02

有限会社を事業承継させるには、どのような形で行うかによって方法が変わります。

また、計画的な事業承継とそうでない事業承継では、金銭的な面を含め異なる点が多いことに注意が必要です。

本記事では、有限会社の事業承継に着目し、有限会社が事業承継する際の具体的な方法を始め、メリットや注意点、事業承継にかかる税金などを解説します。

この記事を書いた人

松村昌典

株式会社エムアイエス 代表

山口県山口市(旧:阿知須町)生まれ 立命館大学経済学部卒業

大学卒業後、山口県中小企業団体中央会に入職。ものづくり補助金事務局を9年間担当。

2022年5月に独立し、株式会社Management Intelligence Service(現:株式会社エムアイエス)を立ち上げる。経営コンサルタントとして支援した企業はのべ1,000社以上。ITやマーケティングに関する知見の深さと、柔軟な発想力による補助金獲得支援に定評がある。自らのM&A経験を活かした企業へのM&A支援も得意とする。
「山口県から日本を元気にする経営コンサルタント」を合言葉に、山口県内の企業はもちろんのこと、県外企業へのコンサルティングも積極的におこなっている。

〈保有資格・認定〉

中小企業診断士
応用情報技術者

〈所属・会員情報〉

山口県中小企業診断士協会 正会員
山口県中小企業組合士会 正会員
山口県中小企業家同友会 正会員

目次

    有限会社とは?

    有限会社の事業承継を解説する前にまずは有限会社の説明をします。有限会社が満たす要件や特例有限会社との違いなどをまとめました。

    有限会社が満たす要件

    有限会社は2006年以前に設立が可能だった会社の形態で、現在は設立ができません。有限会社が設立できた際の要件は以下のとおりです。

    • 資本金300万円以下
    • 出資者50人以下
    • 取締役の任期は無制限
    • 決算公告の義務はなし

    当時株式会社は資本金1,000万円以上、取締役の任期は2年、決算公告の義務あり、という状況だったため、有限会社はかなり緩めに作ることができました。

    2006年の会社法施行で、株式会社は資本金1円から設立できるようになり、このタイミングで有限会社での創業ができなくなった形です。

    参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構

    有限会社と特例有限会社の違い

    有限会社と似た言葉に「特例有限会社」があります。2006年以前より有限会社だった会社がいきなり株式会社を名乗らない形でも成立する枠組みです。それまでの有限会社はすべて「特例有限会社」として扱われるため、この2つは実は同じで、大きな違いはありません。

    2006年の会社法施行により、有限会社は株式会社を名乗ることが可能になりました。しかし、「有限会社○○」など社名として活用してきた企業が、いきなり株式会社を名乗り出せば混乱を招く恐れがあります。

    そこで、特別有限会社という制度が生まれました。大きな特徴は以下のとおりです。

    • 本来の株式会社への移行までは有限会社の文言を社名に入れる
    • 取締役会の設置が認められない
    • 株主総会の特別決議の要件が株式会社より厳しい

    一部株式会社的な枠組みを認めつつも、あくまでも一部に限られ、一般的な株式会社では認められていることが制限されています。

    有限会社における事業承継

    有限会社は経営者・役員・従業員のすべてが家族というケースが多く、お子さんやお孫さんに事業承継がなされることが少なくありません。

    ここでは、出資持分がある有限会社と株式発行している有限会社の事業承継について解説します。

    出資持分がある有限会社

    出資持分とは株式が発行されていない状態です。この場合、有限会社に出資した額に比例する形で会社の資産が与えられるため、出資持分が株式のような扱いとなります。

    仮に出資持分を保有する経営者が亡くなった場合、後継者は経営者が保有していた出資持分を引き継ぐことが可能です。

    現在の出資持分は非上場の株式と同じような扱いのため、事業承継で生じる相続税の計算では税理士など専門家に依頼して評価してもらいます。その後名義の書き換えのほか、社員総会での選任手続きが必要です。

    株式発行している有限会社

    株式を発行しているケースでは、事業承継のやり方は株式会社と大きく変わりません。

    ただし、有限会社の株式に関しては、株主総会を開催した上で譲渡承認請求と承認手続きの2つが必要となります。有限会社は定款の記載の有無にかかわらず、譲渡制限があるためです。

    あとは、税理士への株式の評価依頼などを行って手続きを進めます。

    有限会社が事業承継するときの具体的な方法

    実際に有限会社が事業承継を行う際の方法について解説します。親族内承継、親族外承継、M&Aでは手続きの方法が異なるため注意が必要です。

    親族内承継

    親族内承継の具体的な手続きは以下のとおりです。

    1. 親族の中で後継者を見つけ、承継準備をさせる
    2. 社員などに事業承継をする旨を伝える
    3. 相続や生前贈与などで承継手続きを行う
    4. 個人保証などの名義を後継者の名義に変更する

    親族内承継では相続税が生じるため、財産の確保など相続税の支払い準備をする必要があります。

    円滑に事業承継を進めるには資金の準備や自社の従業員や取引先への周知徹底が不可欠です。特に個人保証を活用して会社の運転資金を借り入れているケースでは、金融機関と話し合いを重ねてスムーズに変更していくことが欠かせません。

    親族外承継

    親族外承継に関しては、「経営者の交代のみ」「株式まで含めた事業承継」の2パターンがあります。まず経営者の交代のみにおける手続きを以下にまとめました。

    1. 今の経営者が辞任する意思を確認する
    2. 株主総会で経営者交代の決議を行う
    3. 辞任・交代に関して登記申請を行う

    有限会社では社長などの経営者交代の際には株主総会を開き、決議を行います。これは今の法律では特例有限会社のままだと取締役会が設置できず、その役割が株主総会に託されているためです。

    登記申請の際には株主などの発言をまとめた議事録の提出が必要となるため、決議の際には作成しなければなりません。

    次に「株式まで含めた事業承継」の具体的な手続きについてです。

    1. 候補者の中から後継者を見つける
    2. 株式譲受に向けて交渉を行う
    3. 株式譲渡契約を行う
    4. 譲渡を完了させて名義の書き換えを行う
    5. 株主総会で経営者交代の決議などを行う

    まずは誰に経営を任せるかについて、親族以外からの候補者をリストにまとめ、交渉を行います。その上で事業評価などを行い、株式譲受に向けた交渉を行う流れです。

    この段階で候補者は、契約前に買収監査を行ってリスクの確認を済ませるなど、事前調査を行うことになります。その後、譲渡契約を結び、親族内承継と同じような流れで手続きを重ねる形です。

    M&A

    M&Aは「第三者承継」と呼ばれ、会社法上では有限会社も株式会社と同じようなルールで行えます。第三者から支援を受ける形で事業承継を行う事例も少なくありません。

    以下に具体的な手続きをまとめました。

    1. 定款の変更を行う
    2. 株式譲受・売却に向けて交渉を行う
    3. 株式譲渡契約を行う(以降は親族外承継の手続きと同じ)

    M&Aでは定款が重要で、前もって定款の確認を行って変更できるものを変更します。変更を怠るとM&Aの際に複雑な手続きを要することになるからです。

    M&Aを想定して定款の変更を行い、その後株式譲受などの交渉を行っていくような形になります。

    事業継承にかかる税金と免除条件

    事業承継の際には税金がかかります。主にかかるのは「相続税」と「贈与税」ですが、ここでは2つの税金・免除条件について解説します。

    相続税

    相続税は経営者が亡くなってから株式などを譲り受けた際に支払う税金です。相続人の数などで基礎控除額が変わる特徴があります。

    実は会社・先代経営者・後継者それぞれが条件を満たせば、事業承継税制を利用して免除を受けることが可能です。

    まずは会社について説明します。

     

    • 都道府県知事から円滑化法に関する認定がある
    • 上場していない
    • 法律で定められた中小企業である
    • 風俗営業会社ではない
    • 常に雇用している従業員が1人以上
    • 前年に事業での収入がある
    • 後継者のみ株式を持っているなど

    次に先代経営者です。

    • 会社の代表権を持っていた
    • 後継者と特別な関係者かつ50%以上の議決権数を持っていた

    最後に後継者について説明します。

    • 相続の前に役員になっていた
    • 相続開始時に経営者と特別な関係者で、50%以上の議決権を持っている
    • 現時点で会社の代表権を持っている
    • 対象の株式をすべて保有している

    贈与税

    贈与税は経営者が生きている時に事業承継を行う際に生じる税金です。贈与税に関しても事業承継税制の活用で、税金の免除を目指せます。

    まずは会社の条件です。

     

    • 都道府県知事から円滑化法に関する認定がある
    • 上場していない
    • 法律で定められた中小企業である
    • 風俗営業会社ではない
    • 資産運用型会社などではない
    • 常に雇用している従業員が1人以上
    • 前年に事業での収入がある
    • 後継者のみ株式を持っているなど

    次に先代経営者について説明します。

    • 会社の代表権を持っていた
    • 贈与の直前、後継者と特別な関係者かつ50%以上の議決権数を持っていた

    最後に後継者です。

    • 3年以上役員に就任して時間が経過している
    • 相続開始時に経営者と特別な関係者で、50%以上の議決権を持っている
    • 現時点で会社の代表権を持っている
    • 対象の株式をすべて保有している
    • 20歳以上

    有限会社における事業承継のメリット

    有限会社において、事業承継を行うメリットは主に4つあります。4つのメリットについて、以下で詳しく解説しましょう。

    経営の持続性を保てる

    事業承継のメリットとして、まず経営の継続性を保てることが挙げられます。いったん廃業・解散となってしまうと再び組織を作っていくのは困難です。

    経営者が変わっても、後継者の存在があれば企業として事業は継続できます。企業さえ存続すれば、今までの実績を活用できるので、取引先などからの信用を保てるでしょう。

    税制面で優遇措置がある

    次に事業承継のメリットとして出てくるのが税制面での優遇措置です。事業承継税制が該当し、相続税や贈与税が免除されるのがポイントになるでしょう。

    基本的に事業継承は多くのお金を用意しなければならないので、少しでも負担を減らせることが大切です。

    ノウハウやネットワークを活用できる

    これまで積み重ねてきたノウハウや人脈などのネットワークを活用できるのもメリットの1つです。専門性の高い業界・業種によっては、技術力や信用・信頼の価値が高く、これまでの経験がモノを言います。

    経営者だけ代わって、雇用が維持される形であれば、対外的には何も変わっていないので、今まで通りの契約や法人との付き合いが可能です。

    事業の活性化が期待できる

    事業承継は事業の活性化への期待につながりやすいでしょう。経営者が代わると、新たなことを実施しようとし、少しでも成長につなげようと対策を立てます。

    後継者に与えられる裁量の割合が増えればより自由に経営が行えるようになり、業務効率化などの推進により活性化につながるでしょう。

    有限会社における事業承継の注意点

    有限会社における事業承継には、注意点・デメリットが存在します。有限会社の事業承継がスムーズに進められるよう、以下に詳細を解説します。

    経営に影響を及ぼさない準備

    事業承継によって経営に何かしらの影響が発生するケースがあるため、注意が必要です。特に引き継ぎ期間は先代と現在の経営者が揃っているので、社員もどちらを向いて仕事をすればよいのかわからないことがあります。

    経営に影響を及ぼさないために、資金面の準備はもちろん、引き継ぎに向けた準備も前もって検討し始めることが大切です。

    後継者の能力や意思決定の違い

    後継者が持つ能力・考え方が先代と異なるケースがあります。いわば舵取り役の意向が大きく変わりやすく、変わり方の規模によっては、経営に影響を与える場合もあるでしょう。

    たとえ小規模の違いであっても、社員は敏感に感じ取ります。事前に能力や考え方の確認をしておくことがおすすめです。

    経営の不確実性やリスク管理

    事業承継を行うと、経営面で不確実性が出てくるほか、リスクが生じることもあります。対外的には経営者が代わることで、信用の部分が揺らぐケースも出てくるでしょう。

    そのため、当面は後継者と先代が一緒にあいさつ回りを行うなどして、事業承継の説明を行っていくことが必要です。

    人材の流出防止

    事業承継で想定されるのが人材の流出です。カリスマ性の強い経営者が先代だった場合、事業承継でその組織にいる意味を見出せなくなるケースもあるでしょう。

    特に外部で働いていた親族が今後後継者となる場合は、なるべく早い段階で有限会社に入ってもらい、社員と一緒に働いてもらう必要があります。

    有限会社の事業承継についてよくある質問

    最後に、有限会社の事業承継に関するよくある質問をまとめました。

    有限会社を無償譲渡したときの税金はどうなる?

    無償譲渡の場合、個人間であれば譲渡した側に税金は発生せず、法人への譲渡では「みなし譲渡所得税」がかかります。

    譲受する側に関しては、個人間であっても贈与税が生じ、この時の贈与税は、譲渡された資産の時価が対象です。

    有限会社の相続で対象になるのは?

    有限会社の相続の場合、有限会社を設立した際の出資持分が対象となります。会社が抱える財産ではなく、あくまでも出資持分の範囲内での相続となるので、出資持分を持つ人が複数いれば、その都度相続の手続きを行う形です。

    事前準備で混乱を減らそう

    有限会社での事業承継は多少複雑な部分はあるものの、事前準備を行えば、負担をある程度軽くできます。

    特に、経営者が高齢で、いつ病気で倒れてもおかしくない場合には元気なうちに事業承継を行うことで、混乱を与えずに事業継続が可能です。第三者への譲渡も含め、早めに今後について考えることをおすすめします。

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