事業承継が進まない理由とは?うまくいかない原因と課題の解決策
2024/11/15
さまざまな要因から事業承継を検討している方も多いのではないでしょうか。
一方で、事業承継をしたくてもなかなか進まないケースは珍しくなく、今後の展開に不安を抱える経営者の方もいるはずです。
この記事では、事業承継が進まない理由を中心に、原因や課題、解決策を解説します。
この記事を書いた人
松村昌典
株式会社エムアイエス 代表
山口県山口市(旧:阿知須町)生まれ 立命館大学経済学部卒業
大学卒業後、山口県中小企業団体中央会に入職。ものづくり補助金事務局を9年間担当。
2022年5月に独立し、株式会社Management Intelligence Service(現:株式会社エムアイエス)を立ち上げる。経営コンサルタントとして支援した企業はのべ1,000社以上。ITやマーケティングに関する知見の深さと、柔軟な発想力による補助金獲得支援に定評がある。自らのM&A経験を活かした企業へのM&A支援も得意とする。
「山口県から日本を元気にする経営コンサルタント」を合言葉に、山口県内の企業はもちろんのこと、県外企業へのコンサルティングも積極的におこなっている。
〈保有資格・認定〉
中小企業診断士
応用情報技術者
〈所属・会員情報〉
山口県中小企業診断士協会 正会員
山口県中小企業組合士会 正会員
山口県中小企業家同友会 正会員
目次
事業承継が進まない理由
事業承継がなかなか進まない理由にはいくつかのケースが想定されます。後継者の問題のほか、事業の継続性、金銭的な問題など、理由はさまざまです。
ここでは、事業承継が進まない主な理由を解説します。
事業承継を進めるときの課題
事業承継を進めていく中で、多くの課題に直面します。先代経営者が新たな経営陣にどれだけ介入するのか、株式移転や社員・取引先との関係の維持など、多くの課題が山積する状況です。
ここでは、事業承継を進めるときの課題を解説します。
後継者への株式の移転
後継者への株式移転も、事業承継における課題となりやすい要素です。株式移転を行う前に、自社の株価評価を行っていなかったケースは全体の3分の1程度に及んでいます。
参考:事業承継に関する実態アンケート報告書-p18-|東京商工会議所
株価評価を行わなかった結果、後継者への株式移転の段階で納税資金や買取資金の確保に奔走せざるを得ない事態を招くでしょう。
また、株価評価を行った際に、評価額が高いことが発覚することもあります。
評価が高いことはよいことである一方、リスクにつながることもあるため、早い段階での調査がおすすめです。
個人保証の引継ぎが難しい
経営者の中には金融機関から融資を受ける際に、自らが連帯保証人となる個人保証を行っているケースがあります。
金融機関側の個人保証のメリットは、回収困難になるリスクを下げられることです。
この個人保証の引き継ぎが難しいのも課題の1つでしょう。
個人保証の引き継ぎを拒否する傾向は強く、中小企業庁が行った調査では、個人保証を理由に事業承継を拒否した割合は全体の6割ほどに及んでいます。
事業承継の方法
事業承継に関しては大きく分けて3つの方法があります。親族同士で行うものや社員に託すもの、企業買収で行うものなど、それぞれの事業承継についてまとめました。
M&Aによる事業承継
企業買収を行って事業承継を行う方法もあります。
近年は親族間・親族外承継を諦めた中小企業を買収する動きが強まっており、今後のトレンドになるであろう方法です。Z
一方で「悪質M&A」と呼ばれる、資産だけを譲渡させて事業や借金は放置してしまうケースも増加しています。
参考:後継者ない中小企業への“悪質M&A”相次ぐ 国が注意呼びかけ|NHK
税理士をはじめとする専門家と相談し、M&Aによる事業承継の知識をつけていくことも必要です。
事業承継の課題を失敗せずに進める方法
事業承継にはメリットがある一方、克服すべき課題も存在しています。こうした課題は事前に計画を作成し、有効活用していけば、失敗せずに進めることが可能です。
ここでは、事業承継の課題を失敗せずに進める方法を解説します。
早い段階で計画・準備に取りかかる
事業承継を行う際は、早い段階で計画・準備に取りかかりましょう。
中小企業庁が定める「事業承継ガイドライン」では、事業承継に向けた準備・進め方のほか、事業承継を取り巻く現状などが紹介されています。
事業承継計画を早期に策定し、円滑な事業承継を行うことで、混乱を少なくすることは可能です。
万が一廃業を検討する場合でも、時間をかけて廃業の準備を行えば、従業員や取引先に対する説明を含めてハレーションを最小限にとどめられます。
事業承継に関するよくある質問
最後に、事業承継に関するよくある質問をまとめました。事業承継において出てきやすい質問を解説します。
事業承継の2025年問題とは?
事業承継の2025年問題とは、2025年以降に事業承継をしたくてもなかなかできない中小企業が増える可能性があることを指します。
そもそも2025年問題は、団塊の世代と呼ばれる人たちが2025年以降に75歳以上になる状況です。
団塊の世代には多くの中小企業経営者がいますが、これらの経営者が一斉に75歳以上を迎えることで、事業承継をしたくても後継者不足で悩まされることが考えられます。
親族間承継・親族外承継・M&Aといった形で事業承継を行うにしても、時間をかけられるのか、すぐさま行わないといけないのかによって方法も変えなければなりません。
一方で、事業承継の2025年問題は高齢化がポイントになるため、早期に事業承継の計画を立てれば回避は可能です。
株価評価を含め、まずはやれることをやって、準備を進めていくことをおすすめします。
事業承継で多い親子トラブルはなに?
事業承継で起こりやすい親子トラブルには、子ども自身が就職して成功を収めている中で、わざわざ辞めてまで家業を継ぎたくないと拒むケースがあります。
親子間で家業を継ぐことに合意している場合、子どもが数年間外部企業で学び、その後退職して親の会社に入り、後継者育成のフェーズに入るのが一般的です。
その話し合いがなされていないと、事業承継を巡ってトラブルになり、最悪の場合は親子の縁が切れる事態にもなりかねません。
一方、配偶者や兄弟姉妹間での相続を巡って、主導権争いが展開されるケースも出てきます。
遺書を残して道筋をつけるほか、早期に計画を策定して準備を重ねていくことでトラブルを未然に防げるでしょう。
まとめ
事業承継が進まない理由は、基本的に準備不足・根回し不足がほとんどです。
裏を返せば、早期に計画を策定して丁寧に準備を重ねていけば、周囲も事業承継を受け入れやすくなるほか、資金面での困難も減らせます。
後継者育成を含め、円滑な事業承継には5年や10年といった時間がかかるため、できるだけ早めに準備を進めましょう。