社長交代による企業のリスク|中小企業がとるべき引き継ぎ対策とは?

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社長交代による企業のリスク|中小企業がとるべき引き継ぎ対策とは?

社長交代による企業のリスク|中小企業がとるべき引き継ぎ対策とは?

2024/09/10

事業承継を行う際に注意しなければならないのが、リスク面の問題です。円滑に経営者の交代ができればよいのですが、段取りを間違えると、さまざまな問題に直面し、今後の経営にも支障が出かねません。

本記事では、社長交代による企業のリスクを中心に、リスクの種類や事業承継の難しさ、対処法などを解説します。

目次

    社長交代が企業にもたらすリスク

    事業承継に伴い社長を交代する場合には、企業にとってのリスクは少なくありません。

    ここでは社長交代時の会社のリスクについて解説します。

    経営方針の変更による混乱

    トップが交代することで、これまで先代が示してきた経営方針が変更され、現場が混乱することがあります。

    経営方針が変化すれば仕事のやり方などがガラッと変わるのが一般的であり、今までの手法が通用しなくなることも考えられるでしょう。

    しかも、後継者は自身がやりたいことを示そうとしがちなので、現場との軋轢が生じやすくなります。その混乱によって、現場で不信感が生まれることも十分に考えられるでしょう。

    株主や投資家の不安感

    先代にカリスマ性があり、頼りがいがあった場合、後継者への事業承継により、株主・投資家が不安感を感じることがあるでしょう。カリスマ性がある社長だと、どんな状況にあっても適切な対応をとり、重要な課題にも逃げずに向かい合います。

    「今度の社長はそれができるの?」という具合に株主や投資家は不安視し、株主総会が開催されれば、その点を突いてくるでしょう。その際に、納得のいく説明ができないと頼りないと判断され、今後の先行きに不透明感が漂いかねません。

    従業員のモチベーション低下

    カリスマ性が強かった代表が後継者に入れ替わる際、従業員のモチベーションが下がってしまうことがあります。

    「この人のために頑張る」という存在によって成り立っている企業は多く、その存在が失われることでやる気が落ちることは十分に考えられるでしょう。

    体制を変えるにしても、役職などをいきなり変えるのではなく、交代時期を前もって決定したうえで、従業員の動向に注目しながら準備を進めていくのが無難です。慎重に発表時期を検討し、ハレーションを起こさないように心がけていくことが求められます。

    顧客や取引先の信頼喪失

    代表取締役が代わることで、これまで支援してくれた企業、顧客、取引先などからの信頼を失うことがあるでしょう。

    例えば、「後継者が明らかに頼りない」「退任の仕方が急すぎる」「説明が乏しい」「目的がわからない」など、さまざまな理由から信頼が失われてしまいます。

    これまでの関係性が失われると、事業継続が難しくなり業績が悪化し、最悪の場合、廃業を検討せざるを得ない事態になることも出てくるでしょう。

    交代を行うにしても、段取りを考慮しながら事前に計画して行わないと、ビジネス的に痛い目を見る可能性があります。

    事業継承による後任社長のリスク

    事業承継をする際には、後任社長にもさまざまなリスクが襲い掛かります。

    例えば、「個人保証の引き継ぎ」や「株式の買い取り」「事業承継で発生する税金」なども後任社長からすれば相当なリスクです。

    個人保証の引き継ぎ

    後継社長が真っ先に気を付けるべきことに、個人保証の引き継ぎがあります。個人保証は、個人の信用を担保にした金融機関からの借金であり、先代の個人保証を引き継ぐ際には注意が必要です。

    あまりにも巨額であれば、先代の代わりに弁済を目指すほか、そもそも銀行などの金融機関が引き継ぎを認めてくれないケースがあります。あくまでも先代の信用が担保とされており、先代の個人保証が重荷になる可能性が十分にあるでしょう。

    株式の買い取り

    後継社長が先代社長から株式の買い取りを行う際にもリスクが伴います。試算した以上に株式の買い取りに費用がかかり、場合によっては資金が不足することも考えられるからです。

    また、買い取り費用を確保する中で、先代社長が亡くなった場合、相続人が複数いて、煩雑な手続きを行わなければならない事態が想定できます。買い取りを目指す場合には、より慎重に、かつ計画性を持った対応が欠かせません。

    事業承継で発生する税金

    事業承継においては、さまざまな税金が発生するケースが少なくありません。仮に無償で株式を譲り受けることになっても、贈与が成立するため、後継の社長が贈与税を支払うことになります。

    この場合は事業承継税制の活用で、贈与税が免除されることもあるでしょう。事業承継税制の利用を目指す際には、免除に向けて条件が備わっているかを確かめることが大切です。

    事業承継が難しいと言われる理由

    事業承継がなかなかスムーズにいかず、難しいと言われる理由にはいくつかのことが考えられます。

    家族間での社長交代

    多くの中小企業では、親族間での社長交代を行います。取締役・役員すべてが親族の場合、誰を後継者とするか、株式をどのように振り分けるかなど、慎重に対応しなければなりません。

    相続の際に費用面をどうするかという問題も出てくるでしょう。色々な問題をはらんでいるからこそ、対応には注意が必要です。

    創業期の成功体験

    先代社長が創業者だった場合、創業者のプライド・成功体験があるため、それらが邪魔をしてしまうことがあります。

    特に年齢を重ねてからの事業承継となると、後継社長よりも業務における知識が優れているという自負もあり、衝突が起こりやすくなるでしょう。

    特に親子間での事業承継では、自分が築き上げてきたものを子どもに否定される感覚に陥りやすい事例も目立ちます。先代の社長は、過去の成功体験を活用して後継社長をサポートする役割に回るのが理想的です。

    ベテラン社員との軋轢

    創業者のプライド・成功体験は、同じようにベテラン社員にもあるため、注意が必要です。

    先代社長を中心に会社を発展させて規模を大きくしてきた自負があるため、後継社長の言うことを聞かないケースも少なくありません。

    特にベテラン社員は現場のことを熟知し、「後継社長は現場のことをわかっていない」と強く思いやすい傾向にあります。こうしたベテラン社員をうまく活かす人事異動を実施するなどして、有効活用する術を検討していかないと、社内をかき乱す存在になりかねません。

    社長交代は「育成する」と「探す」の二択

    スムーズな社長交代を目指す際には、育成することもしくは、適切な人材を見出して任せることの2つから選ぶことになります。

    後継者を育成する

    社員を始め、取引先や顧客などに納得してもらうためにも、後継者の育成が欠かせません。

    事業承継がうまくいくケースでは、ある程度社会人としての経験をさせてから後継者候補となる親族を自社に入社させます。その後、社内で実績を積み重ね、良きタイミングで交代するケースが多いでしょう。

    業界や組織について、さまざまな部門で経験し、昇格していく中でリーダーシップを培うことで、周囲の理解を得やすくなります。

    また、先代が代表取締役社長を辞しても会長に就任すれば、影響力も多少残るため安心です。準備の時間がしっかり取れれば対応もしやすく、トップが変化することに対する周囲の不安も小さくなりやすいでしょう。

    M&Aの選択肢が増加している

    少子化などもあり、後継者候補が親族にいないケースでは、M&Aという選択肢が出てきます。M&Aであれば、個人保証などは新たな企業に引き継がれるほか、売却によって多額の資金を得ることも可能です。

    一方で、M&Aを行う際には、取締役会などの承認が必要であり、なぜM&Aが必要なのかを説明していく必要があります。

    近年は事業承継のコンサルティングサービスが展開されており、専門の機関などが最新の情勢を分析し、将来性を踏まえた提案をしてくれるケースも少なくありません。

    社長交代に関するよくある質問

    社長交代にかかる日数や社長交代によくある理由などをまとめました。

    社長交代にはどれくらいの期間が必要ですか?

    一般に、社長交代には数年程度、場合によっては10年ほどの期間がかかると言われています。後継者の育成を始め、相続や贈与に向けた資金確保、現場に不満が起きない形での移行など、理由はさまざまです。

    一方で、経営者が亡くなって急に社長交代を余儀なくされるケースもあります。1年未満で社長交代を行うケースも少なくない一方、混乱も生じやすく、一定の時間をかけて交代を目指すのが無難でしょう。

    中小企業の社長交代でよくある理由は?

    中小企業の社長交代のケースでよくあるのは、経営者の高齢化です。中小企業の経営者が70歳以上になっても、およそ4割弱の企業では事業承継の着手すら行われていないことが過去の調査で明らかになっています。

    参照:社団法人 中小企業研究センター「中小企業の事業承継に関する調査研究」

     

    また、規模が小さい企業ほど親族への継承を目指しやすく、内部昇格は大企業ほど多くはありません。

    高齢で引退を目指す際、優秀な人材を発掘して担当させるというよりも、なるべく親族に任せたいと考える中小企業の社長が多いことがうかがえます。

    まとめ

    事業承継にはさまざまなリスクがありますが、対策を立てることでリスクをケアできます。

    近年では日本政策金融公庫が行う事業承継マッチング支援に登録して、第三者を通じて事業承継を行うことも可能です。このように事業承継のやり方は多様化しています。

    数年後に引退することを想定して準備を重ねていくことで、スムーズな事業承継につながるでしょう。

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